私は2番目の主人が亡くなった時、「相続放棄をする」と即、決めて動きました。
1年以上前から離婚を前提として別居していましたし、財産があるとは思えなかったし、むしろ債務しかないだろう、と思ったからです。
その際に気を付けたことは、
『公共料金の支払いをしたり、財産になるであろう物を処分してしまうと、相続の意思があると取られ、相続放棄が出来なくなる』ということ!
家が賃貸だったため、片付けないと賃料が発生してしまうし、勝手に中の物を処分してあとから相続放棄できません、と言われるのは困るので、いちいち家庭裁判所にお聞きしたりしながら手続きを進めました。また、その際には、私と義理息子たちが相続放棄したため、次に相続人となる義母、そして義妹の順で相続放棄を行いました。
そして、最終的には『死亡配偶者の親族との姻族関係終了届』を役所に提出して、すっきりです。
相続放棄とは?手続方法やポイントを初心者向けに解説
相続とは、亡くなった人がのこした財産を、相続人が受け継ぐことです。相続では、プラスの財産もマイナスの財産も受け継がなければなりませんが、どちらの財産も受け継がない「相続放棄」という方法もあります。
相続放棄は、相続に関するトラブルを回避したいときや、特定の相続人に財産を集中して相続させたいときの選択肢の一つです。手続方法や注意が必要なポイントにも触れているので、ぜひ参考にしてください。
相続放棄とは何か?
相続放棄とは、簡単にいうと相続が発生した場合に、相続の権利を放棄して相続人とならないことです。相続放棄について、ほかの相続方法や財産放棄との違いを見ていきましょう。
相続方法は3種類
相続の方法は、単純承認・限定承認・相続放棄の3種類です。
単純承認とは、被相続人(亡くなった人)の財産をすべて相続することです。預貯金や不動産はもちろん、マイナスの財産である債務や連帯保証債務についてもそのまま相続します。何もしないでいると自動的に単純承認をしたことになるため、単純承認の場合、特に手続きは必要ありません。
限定承認とは、相続によって得るプラスの財産を限度として債務を弁済する相続方法です。限定承認をするには、相続を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所への申述が必要になります。
例えば、1,000万の財産と1,200万の債務を相続した場合、単純承認では債務200万円を引き継ぎますが、限定承認は財産と同額の1,000万円までしか弁済義務がありません。そのため、相続により債務を抱えずに済みます。
限定承認は、亡くなった人の債務がはっきりしないときや、相続財産のなかに手放したくない不動産があり相続放棄が難しいとき、債務はあるもののプラスの財産が残る可能性があるとき等に有効です。
なお、限定承認は相続人全員で行う必要があるため、一部の人だけが限定承認を選ぶことはできません。
相続放棄とは、相続に関する権利を一切放棄することです。相続放棄をすれば相続人から除外されるため、亡くなった人に多額の債務があっても引き継がずに済みます。相続放棄をした人の子や孫等、次世代への代襲相続も発生しません。なお、相続放棄する場合も、相続を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申述が必要です。
相続放棄を選んだとしても、放棄をした人が受取人となっていた保険金や遺族年金等、相続財産とみなされないものに関しては受け取れます。これらは、亡くなった方の財産ではなく、亡くなったことが理由により、受け取れる権利が発生するものだからです。
相続放棄と財産放棄の違い
相続放棄をすれば、最初から相続はなかったものとして扱います。財産も債務も一切相続しないので、債権者からの請求を受けることもありません。
一方、財産放棄(遺産放棄)とは、相続人間の遺産分割協議で、財産の相続をしない意思を表示することです。裁判所での手続きで法的に相続権を放棄する相続放棄とは大きく異なります。
財産放棄では、相続人としての地位はそのままです。遺産分割協議によって財産を相続しない旨を取り決めることはできますが、法的な放棄の手続きではありません。もし、あとから債務が見つかった場合には、債権者から請求されることになります。
そのため、何らかの事情により一切の財産を相続したくないときには、相続放棄が必要です。
相続放棄を検討したほうがよいケースとは
相続放棄をすれば、相続人としての一切の権利を失い、プラスの相続財産があっても受け取れません。それでも、以下のようなケースでは、相続放棄を検討したほうがよいでしょう。
マイナスの財産が大きく上回る
相続財産のうち、預貯金等プラスの財産よりも債務等マイナスの財産のほうが大きければ、相続人は相続によりマイナスの財産を受け継ぎ、弁済しなければなりません。相続放棄すれば、プラスの財産を受け継げない代わりに、マイナスの財産の弁済義務も受け継がずに済みます。
ただし、債務と財産の額がはっきりしない場合には、相続放棄よりも限定承認が適することもあるでしょう。
また、被相続人の債務のなかに連帯保証があるときも、相続放棄を検討したほうがよいケースといえます。相続では、連帯保証人の地位も引き継ぐことになるため、あとから大きな問題となることも少なくありません。連帯保証が高額だと、特に注意が必要です。
相続人とのトラブルを避けたい
遺産相続では、相続人同士で遺産分割についての協議が必要となり、ほかの相続人との関わりが避けられません。事情によりほかの相続人と関係を持ちたくない場合や、遺産分割にまつわるトラブルに見舞われたくない場合にも、相続放棄も選択肢の一つになります。
遺産分割協議は意見が分かれると長期化しやすく、まとまらなければ調停や審判等に持ち込まれることもあるでしょう。
そういったときに相続放棄をすれば、遺産の相続はできなくなるものの、わずらわしいもめごとに関わらずに済みます。
相続放棄は、ほかの相続人への通知や了承は不要なため、単独で手続きが可能です。ただし、ほかの相続人へ事前に意思を伝えておいたほうが、トラブルを防止できるでしょう。
相続人1人に集中して相続させたい
相続放棄により相続人の数が減れば、相続財産の分散を抑えられます。複数の相続人がいるなか、相続人1人に財産を引き継がせたい事情があるときにも、相続放棄が有効です。
相続財産を1人に集中させたほうがよい例としては、相続人が家業を継ぐ等、事業承継が関係する場合が挙げられます。
事業を営んでいると、債務があることも多いでしょう。遺産分割協議でも相続財産を集中させられますが、債務については債権者が協議内容を承認しない限り、法定相続分に従います。そのため、ほかの相続人に債務の負担をかけないようにするには、相続放棄が必要です。
なお、相続放棄をしても、相続税の控除枠には影響がありません。
相続放棄に必要な手続きと手順
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に申述します。被相続人の住民票除票から最後の住所地を確認したら、裁判所のホームページ等で管轄の裁判所を調べましょう。申述書は、裁判所に直接提出する方法以外に、郵送も可能です。
通常、申述は相続人本人が行いますが、相続人が未成年であれば、親権者等の法定代理人が申述を行います。
相続放棄には期限がある
相続放棄の期限は、先に述べたとおり相続について知った日から3ヵ月以内です。この期限を過ぎると、相続放棄申述書は受理されないため注意しましょう。
状況によっては、相続財産がはっきりしない等、相続放棄をすべきか期限内に判断できないことがあるかもしれません。相続放棄は、相続について知った日から3ヵ月以内であれば、延長の申し立ても可能です。
ただし、延長はあくまでもやむを得ない場合に限るため、延長が認められるかどうかは裁判所の判断によります。延長期間は1ヵ月~3ヵ月程度が一般的です。相続放棄と同様に、手間がかかることも把握しておきましょう。
なお、被相続人が生前のうちに相続放棄をすることはできません。
相続放棄の必要書類
相続放棄には、以下の書類が必要です。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
その他、被相続人と申述人との関係により必要になる書類があるので、裁判所のホームページで確認しておきましょう。戸籍謄本は、本籍地が遠方だと郵送での取り寄せになり時間がかかることもあるため、早めの手配をおすすめします。
相続放棄にかかる費用は以下のとおりです。
- 印紙代 800円
- 戸籍謄本取得費用
- 連絡用の切手料金(裁判所によって異なる)
ご不明な点は、ご相談ください。